第1章 巡礼旅は怖くない 1・ヘタレの私がなぜ歩き始めたか(前編)

フランスからスペインを横断する800kmの歩き旅

中世にルーツを持つ、キリスト教信者のためのスペイン巡礼の道「カミーノ デ サンティアゴ(Camino de Santiago)」を知っていますか?

 

この春、ピレネー山脈のフランス側から、大西洋に程近いスペイン西端に位置するサンティアゴ デ コンポステーラ(Santiago de Compostela)まで、約800kmを33日間かけて、ひとりで歩いてきました。

 

驚いたことに、行き交う巡礼者にFenceinboston世代の女性の多いこと! 若い世代はもちろんですが、80歳を超える人生の大先輩も歩いていたり、50歳前後は歴とした中間層。挨拶代わりに「あなたはなぜ歩いているの?」と問いかけると、世界中から集まったFenceinboston世代は様々な答えを返してくれました。「聖地に行ってみたかったから」、「映画で見て憧れて」、「步く旅にチャレンジしたかったから」、「いろいろな国の人と出会いたくて」、「子供が大学に入って自由な時間が出来たから」などなど。宗教的な理由よりは、それ以外のパーソナルな理由がほとんどでした。

 

もちろん私もそのひとり。巡礼旅に出ることを周りにいうと、「なんでわざわざ大変なことをするの?」、「そんなハードな旅に出る度胸はないわ」、「体力がないから800km歩くなんて無理」、「汚い宿に泊まるなんてイヤ」というセリフと共に、とても驚かれました。ごもっとも、ごもっとも、私だってそう思っていましたよ。

 

だから、初めてこの巡礼の旅について知ってから出発を決意するまで、10年以上かかったのです。いえ、「やっぱりどうしても行ってみたい!」と気持ちが最高潮に高まったのは、「カミーノ」の存在を知ってから10年以上経った日だった、というのが正しいでしょうか。

 

駅のホームにエスカレーターがあれば遠回りしてでも乗りに行く。駐車場に車を停めるときは何周回ろうとギリギリまで近くを探すのが当然。用事は最短距離ですませるように心がけ、無駄な動きはしたくない。常日頃、疲れる行動を避けるのが当たり前になっていた46歳の私が、全行程約800km、バックパックを背負って步く旅に出るなんて。

 

 

濃い霧と小雨の中の出発となった第一日目の山越えの途中、重たい足をどうにか前に押しだしながら、なぜ歩くことになったのか、頭の中のどこかとても奥深い部分で人ごとのように思い返していました。

ピレネー最後の給水ポイント「ロランドの泉」(故障なのか、水枯れなのか、水は出なかった。…最悪)を通り過ぎ、標識も何もないものの、気付けばどうやらスペインに入国していたらしい。路肩には「あなたはバスクにいます」と書かれた看板がひっそりと。頂上のレオポルド峠まではまだまだ登りが続く。

 

 

  • MEMO 第1日目 計25km

サンジャンピエ ド ポー(フランス)

ロンセスバリェス(スペイン/ナヴァラ地方)

 

幾つかある巡礼路の中でも一番ポピュラーな「フランス人の道」と呼ばれるルート。初日にして巡礼路最大の難所である、高低差1200mのピレネー山脈越えが待ち受ける。濃霧、小雨、雹、そして瞬間の晴天にも恵まれるというドラマチックな天候の中、宿に着くまでなんとトータル10時間もの強行軍。

 

地図イラスト/石田奈緒美

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