初夏のトスカーナ、大地と海の食文化

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水ソムリエ&飲泉師

大学・短期大学の保健管理センターにて養護教諭として約7年間勤務。 結婚退職後は製薬会社にてアメリカFDA(厚生省)向けのGC分析を担当。 2000年ライターとして独立。温泉研究が高じてフィレンツェ在住に。

【所属】社)日本旅行作家協会・正会員、温泉学会・理事 イタリア:ミネラル水鑑定士協会・公認水ソムリエ(Idro-Sommelier®)&水鑑定士(n.2689)

ボン・ジョルノ!こんにちは、水ソムリエ&水鑑定士の竹村和花です。

6月前にイタリアの気候は既に30℃、日に日に真夏に向かっていることを感じます。

ただ湿度が低いため暑さ自体は凌ぎやすく、日陰に入れば涼やかな風に癒されます。

海が大好きなイタリア人たちが、こぞって水辺を目指すこの季節。

今回は、初夏のトスカーナをテーマに大地と海の食文化の今をお届けしていきます。

 

<イタリア人のココロに宿る原風景>

イタリア人にとって、何よりも心待ちにしてきた夏がやってきました。

6月に入ると小学校から大学に至るまで、ほとんどの学校が第1週目に卒業式を迎えます。

そしてここから9月の中旬までの間は、楽しみにしていた夏のバカンスに突入します。

こういった長いバカンスを過ごす先は?というと海に近いか、異国情緒が感じられる町。

ここ数年、イタリア国内における人気のバカンス・エリアはシチリア島。

そして定番ですが、サルディニア島、トスカーナと続きます。

イタリア国内にありながら、異国情緒あるいは異文化が感じられるこの2つの島は夏のバカンスにぴったり!と言うのです。

同時にイタリアの原風景とも言われる糸杉の並ぶトスカーナの夏も人気です。

毎年カレンダーに登場するオルチャ渓谷の風景は、イタリア人がココロに想い描く故郷のイメージのひとつとされています。

 

私の住むフィレンツェを州都とするトスカーナは、豊かな葡萄畑や麦畑が続く広大な農耕地を抱えており、郷土料理の種類や数では最も多い州とされています。

春から夏そして秋から晩秋にかけては、アーティチョークやズッキーニ、トマト、ポルチーニ、トリュフと美食の食材にも恵まれます。

 

<キロ・メートル・ゼロの新鮮な食材>

春から夏にかけて、トスカーナでは季節の野菜が次々と旬を迎えます。

春先はアスパラガス、5月には甘酸っぱいサクランボ、定番のズッキーニも花付きで市場や店先に並びます。

農家の人達が、早朝に収穫した野菜や果物をまっすぐ市場に届けてくれる。

そう、フィレンツェに限らずイタリアでは家庭の食卓と農家の畑がとても近いのです。

スローフード運動が生まれたイタリアには、そうした思想活動が生まれることに納得できるほど豊かな暮らしが残っています。

「キロ・メートル・ゼロ」のキャッチフレーズと共に、地場産の食材とそれらをベースにした郷土料理へのリスペクトは年々加速し浸透しつつあります。

人間が生きることの基本、野菜や果物を作り育てて、家庭のテーブルに届ける。

その日採れた野菜や果物を、その日のうちに家族みんなで美味しく食べる。

 

週に一度、おばあちゃんが作ったお料理を、成人した子どもたちが家族を連れて帰宅し食卓を囲む。

日本なら、さしずめお正月やお盆の帰省を、毎週やっているような感じでしょうか。

子どもや孫までそろう大きな家族が、週末にお昼を楽しむ姿はイタリア人が遺伝的に受継ぐ、強くて濃い家族愛そのもの。

彼らの熱く濃い家族の結びつきを見ていると、私たちが便利な暮しと引きかえに失ってしまった大切なものを考えさせられます。

 

 

<地中海の恵みと海洋環境>

さて広大な丘陵地のイメージの強いトスカーナですが、東には地中海に面した豊かな海辺の町や港町があります。

イタリア通の人ならリボルノやグローセットの名前が思い浮かぶかも知れません。

自分たちの町や食文化への意識の強いイタリアでは、基本的に自分たちのテリトリーである郷土料理の枠を超える食事は好んではしません。

ですが、最近では内陸部にあるフィレンツェのような町でも、市場やスーパーに僅かながらも鮮魚が置かれるようになりました。

こうしたイタリアの食文化の微妙な変化や、イタリア食材のアンチョビー人気は、地中海の海洋環境に大きな影響を与え始めています。

 

ラ・スペッツィアに住む環境学の研究者パオロ先生によると、地中海の環境を大きく悪化させている原因は3つ。

1つ目は、まだ幼い稚魚まで大量に捕獲する地引トロールによる漁。

2つ目は、山や川など陸地で捨てられたプラスチックごみの海への流れ込み。

3つ目は、漁船の動力エンジンが出す排気ガス。

これらの原因は今や、地中海に住むクジラを頂点とする生態系に深刻な影響を与えています。

こうした地中海の海洋環境は、イタリアだけで改善できるものではありません。

それでも多くの海洋環境の研究者や法学者、さらにスローフード・インターナショナルを始めとする市民団体が

豊かな海を守るための活動にあたっています。

 

イタリアのリストランテの中には、メニューの名前の後ろに赤いカタツムリのマークが入っている料理があります。

これはスローフード・インターナショナルの展開する「食べて応援」のシンボル。

海の幸のメニューに付いたカタツムリのマークは、漁師さん達が昔からの漁の方法で捕った食材を使っているという証です。

もしイタリアで食事をされる際にカタツムリのマークを見かけたら、ぜひ地中海を守る活動を「食べて応援」してあげて下さいね。

 

次ページに続きます。

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第67回
初夏のトスカーナ、大地と海の食文化

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