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全力応援! 40〜50代の美とからだ

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家族で北海道へ山村留学。 特別な1年を記録した感動と驚嘆のエッセイ集

南国生まれのせいか、単にこらえ性がないのか、寒さが超苦手な私。長年の友ともいえる肩こりが、この時期は特に居座り続けることもあって、「早く暖かくならないかな」と毎日呪文のように唱えています。
だからテレビで北の風景を見ても、寒い時期のものだと「わー、きれい! 行ってみたい!」とテンションが上がることは皆無(笑)。真っ白なパウダースノウも、すっくと伸びる白樺の木立も、私にとっては現実ではなく絵みたいなもの。最初から「自分には縁がない世界」と断定(!?)していました。

 

そんな私が読み終わるなり「寒い時期がものすごく長そうだけど、ここで暮らして季節の移ろいを感じてみたい!」と思ったのだから、『神さまたちの遊ぶ庭』は、自分史上画期的なエッセイ集です。
書いたのは宮下奈都さん。ひとりの少女が悩みながら女性へと成長していく姿を描いた『スコーレNO.4』で注目を集め、その後も着実に小説を発表し続けている女性作家です。

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『神さまたちの遊ぶ庭』
宮下奈都 光文社 1500円(税別)
「景色が『神』だよ」by長男
「(パソコンの遅い回線を前に)もっと熱くなれよ!」
by次男
「えっ、十二歳って千歳?」by長女
子どもたちのユニークな発言もこの本のツボ!

 

 

もともと福井在住の宮下さんは、夫と子ども3人の5人暮らし。北海道を愛する夫の希望で、帯広に2年間行く予定でしたが、出発の3カ月前に彼から“もっと自然に根差した暮らしがしたい”という提案が。それを子どもたちに話したところ、「いいね」「おもしろそう」とあっさり決着。そこから「勢いまかせ」に家族ぐるみでの山村留学へと突き進んで行きます。
場所は大雪山国立公園の中のトムラウシという集落。アイヌ語で「カムイミンタラ」=神々の遊ぶ庭と呼ばれるくらい、素晴らしい景観の地でした。
ただしこの山村留学は、最初から1年間と決まっていました。というのもトムラウシには高校がなく、中3の宮下家の長男が進学するにはそこを離れなければならなかったから。つまり、家族そろってトムラウシで暮らすには、その1年しかなかったというわけです。

 

出発前の気持ちを、宮下さんはこうつづっています。「自然の中で、家族それぞれが一年をかけて、これからどう生きていくか考えるチャンス……だと思いたい」。

 

1年という期限付きで移住したこと。それがこのエッセイ集というか宮下さんの目を、特別なものにしたような気がします。
つまり宮下家は、トムラウシの春、夏、秋、冬を1回ずつしか経験できない。集落の人たちは定住しているけれど(山村留学を延長して7年目という家族もいるが)、宮下家は必ず去らなければならない。だからこそ、手つかずの自然や連帯感で結ばれた人たちを見る宮下さんの目は、いい意味で感じやすくなっているような気がします。驚きや感動を深く胸に刻んでいるように思えます。

 

家からTSUTAYAまで60キロ、最寄りのスーパーまで37キロ。インターネットは携帯からつなげて使うような場所に住むことは、街暮らしをしてきた人には不便だし、少人数の集落は人間関係を狭くするのでは――そう思う人が多いかもしれません。
でもそれらは考え方ひとつで変わるものであり、長所にもなりうることを、この本は教えてくれます。
スーパーに行くのに30分以上かかるといっても、都会では通勤に30分以上なんて人はざらだよね。外食はなかなかできなくても、家族そろっての家ごはんが増えるっていいよね。小学生は10人、中学生は5人でも、子どもたちに活躍の場がたくさんあって、彼らのことを集落の大人たちが見守っているっていいよね……胸の中で宮下さんにそう語りかけながら、読んでいたような気がします。

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『よろこびの歌』
宮下奈都 実業之日本社(現在は実業之日本社文庫に)
宮下さんの本ではこれもオススメ。著名なヴァイオリニストの娘で声楽を志す玲は、音大付属高の受験に失敗。挫折感を抱きつつ新設女子高に進むが、校内合唱コンクールをきっかけに少しずつ変わっていく。青春小説の傑作!

 

 

正直に言えば、私の「暮らしてみたい!」という気持ちは、現実的ではないというか、憧れにすぎないでしょう(笑)。もちろん、家の前に現れるエゾシカの姿や、新緑の季節の「山が生きている」様子を“住んで”気づいてみたいのはやまやま。でも台風による停電で10月なのに部屋が氷点下になったり、ストーブが故障したらスキーウェアを着て修理を待つような暮らしを本当にできるかといえば――多分及び腰になると思います。

 

でも最初から断念するのではなく、気が済むまで憧れていたいと初めて思いました。だって、憧れは気軽に持っていてもいい気がしたから。ひょんなことで自分が変わる場合もあると信じたいから。そんなことを思わせてくれたこの本に、今とても感謝しています。

 

 

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