荒川静香とともに歩み、高橋大輔とともに泣いた日々

高橋大輔さんとの出会い

 

吉田さん 高橋大輔さん

Russian Look/アフロ
2010年 バンクーバーオリンピック「道」で銅メダルを獲得

 

もちろん大ちゃんとも知り合いではありませんが、やはり、他人とは思えないほど熱を入れて応援させてもらいました。当時よく「大ちゃんを息子みたいに思っているんですね」という人がいましたが、それは違います。毎シーズン動向を見守り、成績がよければ喜び、怪我をすれば悲しみ、ともに困難を乗り越えてきた、人生を共に歩む同士。そんな感じでしょうか。荒川さんもそうであったように、「わたしがついていてあげなければ」と思わせてくれる選手が、わたしは好きなのです。

 

2002年、大ちゃんは日本人男子ではじめてジュニアの世界チャンピオンになりました。しかし、その後の道のりは険しいものでした。当時の大ちゃんに関しては、転倒する姿や泣きべそ顔しか覚えていないほどです。しかし、そんな彼にも覚醒の時がやってきました。

 

トリノオリンピック目前の2005年、グランプリシリーズの開幕戦アメリカ大会で、大ちゃんは、その後の彼の代名詞となった華麗なるステップを披露し、初優勝を飾りました。それまでの選手とはまったく違う独自の表現力。そして何より、前シーズンまでの泣きべそ顔とはまるで違う闘志に満ちた表情。人間、気持ち次第でここまで変われるんだ。それからわたしは、どんどん進化していく大ちゃんの熱狂的なファンとなったのです。

 

トリノオリンピックでは、フィギュア男子シングルの出場は大ちゃんひとり。そのプレッシャーからか、もうひとつ実力を出しきることができませんでした。しかしその翌年、東京で開催された世界選手権で、ついに大ちゃんは、日本人男子最高位である2位に輝きました。わたしはこの記念すべき試合を競技場で観戦するという好運に恵まれました。フリーのプログラムは、忘れもしないあの「オペラ座の怪人」。最後のステップに入るところで感極まったように両手を振り上げた時の大ちゃんは、涙ぐんでいたように思います。それは、以前の泣きべそとは違う歓喜の涙でした。

 

それ以降、アーティストとしての才能も大爆発。白鳥の湖ヒップホップバージョンなどの名作プログラムがいくつも生まれます。しかし、2008-2009シーズンの10月、大ちゃんは右膝に大怪我を負い、そのシーズンを手術とリハビリだけで過ごすことになりました。ファンとして、人生の同士として、どれほど心配したことか。

 

しかし2009年には無事復活し、2010年のバンクーバーオリンピックで、日本人男子初となる銅メダルを取りました。フリーの「道」の演技は、もはやスポーツの枠を超えた大輔ワールド全開のパフォーマンスでした。そしてそのシーズンの最後を飾る世界選手権で、大ちゃんは、ついに念願の世界チャンピオンのタイトルを手にしたのです。

 

その後も大ちゃんは現役を続け、これも伝説的プログラムである「エル・マンボ、ある恋の物語」を生みだします。「ウッ」と皆で掛け声をかけたくなるユーモラスな振り付けを覚えている方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、さしもの大ちゃんも年齢による衰えは隠せず、2012年の全日本では、羽生結弦選手にチャンピオンの座を奪われます。また、このころから、遅咲きの「滑る哲学者」町田樹選手も台頭。2014年のソチオリンピックでは、羽生1位、町田5位に続く日本人最下位の6位となりました。しかし、この時の大ちゃんのフリー「ビートルズメドレー」も、バンクーバーの「道」に負けないほど感動的でした。

 

おそらくこの時、大ちゃんは、すでに現役引退を決めていたのだと思います。もう順位も点数も関係ない。ただただ滑るのが好きで、ここまで来たのだということが伝わって来るすがすがしい表情。できることはすべてやったという満足感。自分を支えてくれたフィギュアスケートというスポーツへの深いリスペクト、そうした万感の思いが込められた滑りに、わたしたちファンが贈った言葉は「今まであなたのファンでいられて幸せでした。ありがとう大ちゃん」の一言でした。

 

大ちゃんの引退後、わたしは一時的な虚脱状態に陥り、「わたしもそろそろ、フィギュアファンを引退しようかしら」などと思ったものです。しかし若い選手たちの活躍が、再びわたしのファン魂に火をつけてくれました。

 

「フィギュアとわたしの44年」第3回は、2016年の3月末~4月頭にアメリカのボストンで開催される世界選手権の見どころを中心に語らせていただきたいと思います。

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